読書日和

読んだ本のこと。ときどき、邦画の感想とブログライターの記事も。




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「流しのしたの骨」 江國香織

2007-08-30-Thu
流しのしたの骨 (新潮文庫)流しのしたの骨 (新潮文庫)
(1999/09)
江國 香織

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たとえお隣でも、よそのうちは外国より遠い。違う空気が流れている。
怪談のきしみ方も、薬箱の中身も、よく口にする冗談も、タブーも、思い出も。
19歳の「私」と、不思議な家族たちの物語。〜amazonより〜

宮坂家は、父と母、長女そよちゃん、次女しま子ちゃん、三女こと子ちゃん、
長男であり"小さな弟"である律の6人家族。この家族が過ごした晩秋から
春までの生活が、こと子の視点で淡々と語られます。

江國さんがあとがきで「よそのうちのなかをみるのはおもしろい」と
書いているように、宮坂家の日常をのぞきみているような感覚になります。
宮坂家の日常はかなり非日常的ですが、それが宮坂家らしさでもあります。

同じ家で生まれて育ってきたのに考え方や生き方が全然違う姉妹や、
家族にしかわからないことと家族だからこそわからないことが不思議で、
私は「家族」について書かれた本がやっぱり好きだなぁと思わされました。

「憂鬱なハスビーン」 朝比奈あすか

2007-08-27-Mon
憂鬱なハスビーン憂鬱なハスビーン
(2006/09/01)
朝比奈 あすか

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あなたは誰かに期待されていますか? まだ自分に期待していますか?
東大卒、一流企業でスピード出世、弁護士の夫と結婚。
だが、今の私は満ち足りていない。
そんな29歳の凛子はある日、かつての神童・熊沢くんと出会い…。
〜amazonより〜

東大を出て、外資系の一流企業でスピード出世した主人公・凛子でしたが、
そのプライドの高さが彼女を動けなくしてしまい、いつのまにかエリートコースから
外されていました。

挫折を味わい会社を退職した凛子は、弁護士の夫と高級マンションに住みながら
職安に通いますが、ご近所や姑とも上手くつきあえません。
ある日、就職セミナーで偶然小学校時代の塾でトップだった熊沢くんに再会した
凛子は「ハスビーン」という言葉を聞かされ、自分のルーツについて考えます。

タイトルにもある「ハスビーン」とは英語の「Has been」のことで、
かつては何者かであった、そしてもう終わってしまった、つまり一発屋のこと。

凛子がいつもイライラしていて、周囲に対する態度もやけにとげとげしいところが
あまり好きになれず、暗い気持ちで読み進めました。
でも、この気持ちわかるかも・・・という部分が見えてくると、徐々に凛子の苦しみが
伝わってきます。自分で気がつくならいいことを他人に指摘されるとかちんと
きたりする、誰にでもあるマイナスな気持ちと向き合った作品です。
自分で自分に期待してしまうことはプラスにもマイナスにもはたらくんですね。

「宇宙のみなしご」 森絵都

2007-08-26-Sun
宇宙のみなしご 宇宙のみなしご
森 絵都 (1994/11)
講談社

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真夜中の屋根のぼりは、陽子・リン姉弟のとっておきの秘密の遊びだった。
やがて、思いがけない仲間がくわわって…。〜amazonより〜

中学2年生の陽子と弟のリンは、面白い遊びを考え出すのが大好きな兄弟。
ある晩、屋根の上を気持ちよさそうに歩く猫を見て、陽子は"屋根のぼり"を
思い付きました。そこに、陽子のクラスメイトの七瀬さんと相川も加わります。

彼らにとって屋根のぼりはただの楽しくてスリルのある遊びではなく、
自分の居場所を見つけるものでもあります。
子どもの世界にもたくさんの悩みがあって、そういう喧騒から逃れるように
屋根に上り夜空を見上げます。
読んでいると自分も一緒にのぼっているような気がして、
夜のひんやりとした空気とつないだ手の温もりが、とても伝わる文章でした。

子どものころに屋根に上ったことがある人ってけっこういるんじゃないかな
と思いました。私もその一人で、当時を思い出しました。
屋根の上ってなんだかすごく自由だった気がします。
そして空がすごく大きかったなぁと

陽子たちは様々な思いを胸に屋根のぼりを続け、自分の気持ちを整理します。
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから、自分の力できらきら輝いていないと
宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃう。
でも、だからこそときどき手をつなぎあえる友達が必要なんだよ」という
メッセージが素敵です。

「ぼくは勉強ができない」 山田詠美

2007-08-25-Sat
この本にはある思い出があります。
大学入試のセンター試験を受けたときに、現代国語の問題に使われたんです。
高校生くらいから読書好きでこの本はすでに読んでいたので、
問題を読む時間が省けたのです
なんというか、本を読んでいることが「役に立った!」と妙に実感した体験でした。

ぼくは勉強ができない (新潮文庫) ぼくは勉強ができない (新潮文庫)
山田 詠美 (1996/02)
新潮社

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ぼくは確かに成績が悪いよ。
でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。
17歳の時田秀美は、サッカー好きの高校生。勉強はできないが女性にはもてる。
ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。
母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。
この窮屈さはいったい何なんだ。凛々しい秀美が活躍する高校生小説。
〜amazonより〜

主人公は高校2年生の時田秀美。
「ぼくは勉強ができない」と自分で言えてしまう男の子。このことは秀美の性格を
よく表していると思います。父親がいなくて母親も祖父も恋をすることに忙しい、
そういう家庭環境が秀美に、自分らしくあることの大切さや世間一般の考え方が
いつも正しいとは限らないことを早いうちに気づかせたのだと思います。

秀美は自分の置かれた環境や考え方が世間一般のものとは違うことをちゃんと
知りつつ、それでもあくまで自分が正しいと信じることに忠実に生きていこうとする
ところが時に子どもっぽく、時に格好良く見えました。

秀美はよく周囲の人と衝突します。学年でトップクラスの成績に誇りを持っている
脇山、自分が可愛いことを知っていて無垢な乙女を演じようとする山野、
そして教育熱心な学年主任。秀美は別にそうした人間と対立したいわけではなく、
ただ彼らがあまりにも安易な価値観を信じ込んでいてそれが正しいのかを
知ろうともしないところに苛立ってしまうのです。
家庭と学校で様々な出来事を経験した秀美が「勉強ができるようになりたい」と
思うラストが良かったです。

「日曜日たち」 吉田修一

2007-08-24-Fri
日曜日たち日曜日たち
(2003/08/26)
吉田 修一

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ありふれた「日曜日」。
だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。
都会の喧騒と鬱屈した毎日の中で、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の
姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な兄弟。
ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
〜amazonaより〜

東京で暮らす男女の日曜日が5編収められています。
会社をクビになった男が、日曜日ごとに部屋を訪れていた恋人のことを思い出す
「日曜日のエレベーター」。
恋人の暴力に耐えかねたOLが、自立支援センターに足を運ぶまでを描いた
「日曜日たち」。
どの話にも、主人公が日曜日という"現在"に、かつて自分が関わった人との
"過去"を回想するという共通点があります。

そのどの"過去"にも登場する幼い兄弟がいます。
「日曜日の新郎たち」の健吾は、家出してきた兄弟に寿司をおごってやる、
といった感じに。そして最後の「日曜日たち」で、その兄弟がどんな事情を抱えて
ふたりきりでいるのか、という謎が明らかになります。

このように無関係そうに見える人たちに接点(この本では兄弟)を持たせるような
手法が私は好きです。人と人とのつながりを感じるからです。個々のつながりは
限られていますが、何らかの接点を通してつながっている人はたくさんいて、
そう考えると日常のちょっとした出来事も意味を持つような気がします。

「イン・ザ・プール」 奥田英朗

2007-08-23-Thu
イン・ザ・プール イン・ザ・プール
奥田 英朗 (2002/05)
文藝春秋

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どっちが患者なのか? トンデモ精神科医伊良部の元を訪れた悩める者たちは
その稚気に驚き、呆れ…。水泳中毒、ケータイ中毒、ヘンなビョーキの人々を
描いた連作短篇集。〜amazonより〜

伊良部総合病院の地下にある薄暗い神経科に、へんてこな精神科医・伊良部
はいます。マザコンで注射フェチ。そこを訪れた患者たちは、伊良部のとんでもない
言動に触れて・・・というストーリー。

「イン・ザ・プール」ではプール中毒の雑誌編集者、
「フレンズ」では携帯電話依存症の男子高校生、
「いてもたっても」では火を消したかが気になって仕方がない女性が登場します。
みんな一見普通なのに、ひとつのことにこだわりすぎて、
それが常軌を逸しているので精神科へ行くことになります。
普通と精神病の微妙なライン、本人たちの真剣さとそれを傍から見る人の
冷静さが面白可笑しく書かれています。

伊良部は、ときに患者よりもアブない行動をとります。患者を治そうとする気配は
全く感じられません。患者たちはそんな伊良部に振りまわされてばかりなのに、
少しずつ快方に向かっていきます。この本のいいところは、伊良部が実は確信犯で
こういう行動ををとっていた、とはならないところです。最後まで「なんだったの?」
って感じなんです。それがかえって、いろんなことを考えさせてくれます。

「きょうのできごと」 柴崎友香

2007-08-22-Wed
きょうのできごと (河出文庫)きょうのできごと (河出文庫)
(2004/03/05)
柴崎友香

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ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。
彼らがその日経験した小さな出会い、せつない思い。5つの視点で描かれた
小さな惑星の小さな物語。書下ろし「きょうのできごとの、つづきのできごと」収録。
〜amazonより〜

舞台は京都。正道の大学院合格&引っ越し祝いに飲み会をしようと
一軒の小さな家に集まった若者たち。けいと・真紀・中沢・かわち・正道、
それぞれの視点でその日のできごとが描かれています。
視点(語り手)が変わるので、同じできごとでも違う風景に見えて、
物語がより深いものになります。自分が振る舞っている姿と、
それを他人が見た姿を両方知ることが出来るように書かれているのが良いんです。

特に何がも起きるわけでもなく、ひと言でいってしまえば"飲み会をしているだけ"。
なのに、本当に面白くて一気に読んでしまった、その描写力に☆5つにしました。
高速道路の灯が作る陰と光が車内を通り過ぎる様子。酔っ払いながらも
お風呂場で散髪する様子。自転車に乗って夜の道を走る様子。
そういうひとつひとつを、登場人物たちの会話(あたたかみのある関西弁)や
しぐさや細かい情景描写が、リアルさを持たせて心地よい物語にしています。

夜12時を過ぎたから「あした」じゃなくて、「きょう」がずっと続いていく毎日って
いいなぁと思いました。
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