読書日和

読んだ本のこと。ときどき、邦画の感想とブログライターの記事も。




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「100回泣くこと」 中村航

2007-07-29-Sun
100回泣くこと100回泣くこと
(2005/10)
中村 航

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交際3年。求婚済み。年の差なし。ここが世界の頂点だと思っていた。
こんな生活がずっと続くんだと思っていた―。精緻にしてキュート。
清冽で伸びやか。いま最注目、野間文芸新人賞作家が放つ恋愛長編。
〜amazonより〜

付き合って3年の彼女にプロポーズをした僕に、彼女は1年間結婚の練習をしよう、
と言いました。いつまでも続くと思っていたその幸福な生活は、
彼女の病気によって・・・というストーリー。

前半のふたりの生活がとても素敵なものでした。
前向きで真面目な生活が清々しいんです。3ヶ月に1度の反省会もかわいらしく、
繰り返される日常を大切にしているのが伝わりました。

愛する人を失うストーリーはたくさんありますが、この本の特徴は全体的に
僕と彼女の生活感のある日常が書かれていることです。キレイすぎるエピソード
ではなく、出会いから別れ、その後の僕の生活が淡々と書かれています。

病気や死が出てくるお話は、それが本当に必要だったのかを考えてしまう
クセがあるのですが、これはタイトルとラストが良かったですし、
愛する人のために何ができるか?を問いかけている作品なんだと思いました。

「夏の庭」 湯本香樹実

2007-07-28-Sat
音楽が聞いた当時のことを思い出させてくれるように、本も読んだときのことを
思い出させてくれます。
この本は、高校生の夏休みに祖母が入院していた病院のロビーで読みました。
病院のひんやりとした感じをとてもよく憶えていて、"死"について考えさせられる
内容も印象的でした。夏になると読みたくなる一冊です。

夏の庭―The Friends (新潮文庫)夏の庭―The Friends (新潮文庫)
(1994/03)
湯本 香樹実

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小学6年の夏、ぼくと山下、河辺の3人は、人が死ぬ瞬間を見てみたいという
好奇心から、町外れに住むおじいさんを見張ることにする。
一方、観察されていると気づいたおじいさんは、憤慨しつつもやがて少年たちの
来訪を楽しみに待つようになる。
ぎこちなく触れあいながら、少年達の悩みとおじいさんの寂しさは解けあい、
忘れられないひと夏の友情が生まれる。〜amazonより〜

"死"への好奇心からおじいさんを観察することにしたぼくと山下と河辺。
最初はおじいさんの顔がなかなか覚えられない、と言っていたぼくでしたが、
観察がばれてだんだんおじいさんと接する機会が増えると、
たくさんいる不特定多数のおじいさんがたった一人のおじいさんになっていきます。

ぼくたちとおじいさんが仲良くなっていく過程がとても自然に描かれていました。
ぼくたちはおじいさんから、家の手入れの仕方、草花の名前、漢字、
そして戦争の悲惨さを学び、おじいさんもまた彼らと語ることで、
寂しさが軽減し生き生きとし始めます。

そして仲良くなった分、おじいさんの死はとても重い。
それまでぼくたちにとって"死"は得体の知れない恐怖でしたが、初めて身近な人の
死を経験したぼくたちは、"死"がその一瞬にある恐怖なのではなく
長い人生の最後に在るものであることを知ります。

3人の少年たちの家庭環境が複雑すぎた感じもしましたが、
少年たちはこの夏の経験を絶対に忘れないし、それぞれの人生をゆっくりしっかり
歩んでいくんだろうなと思いました。

「MISSING」 本多孝好

2007-07-25-Wed
MISSING (双葉文庫)MISSING (双葉文庫)
(2001/11)
本多 孝好

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繊細な視線で描かれた物語が、心の奥底に潜むミステリアスな風景を
呼び覚ます。小説推理新人賞受賞作「眠りの海」ほか、4作品を収録した
処女短編集。〜amazonより〜

「眠りの海」
自殺の名所と呼ばれる断崖で飛び込み自殺を図った私は、
見知らぬ少年に助けられ、自殺に至った自分の人生を語り始める。

「祈灯」
妹の友達で「幽霊ちゃん」と呼ばれる彼女は、自分の事を幼い頃に亡くした妹
だと思い込んでいるという。

「蝉の証」
祖母が暮らす老人ホームを訪ねた僕は、祖母から頼まれ、同じホームで暮らす
相川さんのところにやってきた若い男について調べ始める。

「瑠璃」
ルコ、という名を持つ僕のいとこ。その目は深い海のような紺色をしていた。
今でも僕はふとした瞬間に彼女のことを思い出し、悼む。

「彼の棲む場所」
僕は18年ぶりに彼に会った。私立大学の教授を勤め、メディアに欠かせない
存在となっている彼が語り始めたのは、高校時代に起きた事件だった。

『MISSING』というタイトル通り、大切な人を亡くした喪失感を描いた作品。
ミステリーの謎解きもありつつ、読み終わった後色々と考えさせられるんです。
繊細で透明感のある文章が印象的でした。
私が好きなのは「眠りの海」と「瑠璃」で、特に「瑠璃」は、僕とルコの会話が
とても心に沁みて切なかったです。どの話も、みんな傷つきながら(傷ついた人と
関わりながら)、それによって何かを感じ取って生きていく姿が描かれていました。

「シルエット」 島本理生

2007-07-24-Tue
シルエットシルエット
(2001/11)
島本 理生

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そっと抱きしめたい、人を想う痛みといとおしさ。
清新な感性がきらめく17歳のデビュー作。群像新人文学賞優秀作受賞。
〜amazonより〜

「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」の3編が収められていて、
どれも主人公の揺れ動く心や、若さからくる繊細さを的確に表現しています。

表題作の「シルエット」は、今は大学生のせっちゃんと付き合っているけれど、
どこかで元恋人の冠くんのことが忘れられないでいる"わたし"の物語。
両親が悲しい形で別れ母親の面倒を見ている冠くんは、女性に触れることが
できなくなってしまった男の子でした。

せっちゃんを好きな気持ちとは別のところで、冠くんへの思いが残っている"わたし"
を通して、他人を理解することの難しさ、人を好きになることの高揚と葛藤が
描かれています。ストーリーや構成で驚かされるようなことがなくても、
静かな世界観を味わえる良い作品です。

著者があとがきで述べている「書きたかったのは、ずっと一人だけで守ってきた
心の中に初めて他人という存在が深く関わってくるときの感覚や気持ちで、
その息苦しさや、それでもだれかを強く必要とする気持ちを、
この本から感じ取っていただけたら嬉しい」という言葉が印象的でした。

「おめでとう」 川上弘美

2007-07-21-Sat
おめでとうおめでとう
(2000/11)
川上 弘美

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きんめ鯛を手土産に恋しいタマヨさんを訪ねる“あたし”の旅。
終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌。
家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日。
ぽっかりあかるく深々せつない12の恋の物語。〜amazonより〜

川上さんの作品は、読んでいるうちにどこか別の世界に迷い込んでしまったような
不思議な感覚に陥ります。なので、感想も何と書いたらいいのか悩んでいたら、
この本の解説に思わず納得してしまった部分がありました。
「川上弘美の小説やエッセーを読むと、必ず何度か笑ってしまう。
しかし、あははと笑ったことはない。ふふふと笑う」
「個人の不安やかなしみを、いとも自然に、人間というものの不安やかなしみに
転化させる不思議が満ちている」
「会えば別れがくる。各編に流れるものは、愛の不確かさの確かさである」
とてもよく、この小説を表している言葉たちだと思います。

どの話も余計なもの・ことを排除して、シンプルに進んでいきます。女性同士の話や
幽霊が出てくる話もあり、設定は少し変わっているかもしれませんが、
恋愛中のふたりの世界をちょっとだけ覗かせてもらっているような印象です。

詩のように短く淡々とした文章が妙に説得力があり、"今確かにあるこの瞬間は
いつか終わってしまうんだろうな・・・"という諦め感がどの話にも漂っています。
そしてそれを、かなしいだけでなく愛しいと思わせてくれます。
私は、『どうにもこうにも』『冬一日』『川』が好きでした。

「しょっぱいドライブ」 大道珠貴

2007-07-20-Fri
第128回芥川賞受賞作☆

しょっぱいドライブしょっぱいドライブ
(2003/02/25)
大道 珠貴

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海沿いにある小さな町を舞台に、34歳の実穂と60代前半の男性九十九さんの
微妙な恋愛関係を、語り手である実穂の視点から描く。
このほか、中学2年生の不登校の少女と26歳の相撲取りという不思議な
組み合わせのカップルを描いた「富士額」、若い女性同士の密着感のある奇妙な
主従関係をつづった「タンポポと流星」を収録した短編集。〜amazonより〜

実穂は定職にも就かず、60過ぎの妻子ある男・九十九さんとデートを重ねて
います。これだけだとなんだか実穂に計算がありそうに思えてしまうのですが、
実穂もまた、ちょっと社会からはみ出たようなところがあって、
このふたりの浮世離れしたふわふわした状態が不思議な作品でした。

実穂と九十九さんのデートは、九十九さんの運転する車に乗って生まれ故郷の
潮の匂いの漂う町のドライブ。初め、海が近いところからタイトルに「しょっぱい」が
ついているのかと思ったのですが、どうも『イケてない』という意味のようです。

イケてないふたりの冴えないデート・・・。なのに、暗さばかりではありません。
自分の居場所を求める実穂と、自分なりに人生の最後に恋をしようとする
九十九さんの打算と切なさが丁寧に描かれています。
そこには悲しいユーモアが漂っていて、妙に後を引く読後感でした。

「コンビニ・ララバイ」 池永陽

2007-07-19-Thu
コンビニ・ララバイ (集英社文庫)コンビニ・ララバイ (集英社文庫)
(2005/06/17)
池永 陽

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妻子を亡くした幹郎が経営するコンビニ・ミユキマート。店には傷ついた人が集まり
そこでの交流を通していつしか癒されていく。
本の雑誌が選ぶ2002年上半期ベスト1作品。〜amazonより〜

小さなコンビニ"ミユキマート"のオーナー・幹郎は妻子を事故で亡くし、
幸せにできなかったことを悔やんでいた。すっかりやる気をなくした幹郎のもとに、
同じように悩みや悲しみを抱えた人が集まってきて・・・という短編連作集。
カンを蹴る/向こう側/パントマイム/パンの記憶/あわせ鏡/
オヤジ狩りの夜/ベンチに降りた奇跡

堅気の女性に惚れてしまったヤクザ、声を失った女優の卵、店の前のベンチで
デートを重ねる老年のカップルなどが登場します。
どの話も、大人の汚い部分や弱い部分がリアルに描かれています。
あまりにリアルで切なすぎる感じもしましたが。。

そんな登場人物たちと少しずつ関わる幹郎。
幹郎が家族の死を乗り越えているからこそ、彼の言葉は重みがあって伝わるの
だと思います。どの話も、大きな展開を見せず、変わろう!と思い始めるところで
終わります。思わず、これからどうなるのかを考え、期待してしまいます。
やり直しがきかない人生の切なさ、そして面白さを教わった気がします。
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