読書日和

読んだ本のこと。ときどき、邦画の感想とブログライターの記事も。



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「図書館の神様」 瀬尾まいこ

2007-07-10-Tue
図書館の神様図書館の神様
(2003/12/18)
瀬尾 まいこ

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アクシデントで夢をあきらめ、傷ついた心を抱え、国語教師としてある高校に
赴任したヒロイン・清(きよ)。彼女が学校の図書館で出会ったひとりの男の子・
垣内君。どこからでも海の見える明るい高校で、瑞々しい物語が始まる…。
〜amazonより〜

清く正しく生きてきた主人公・清は、過去のある出来事から人生に投げやりになり、
今はなんとなく先生になり、訳ありの恋愛をしています。
そんな清が、国語の教師であるというだけの理由で、文芸部の顧問になることで、
本に全く興味がない清と、たった1人の部員・垣内くんの交流が始まります。

清はとても真面目で、清く正しくないものはそれだけでだめなことのような気がする
性格の持ち主ですが、文学に親しんでいくのと比例して、清の止まっていた時間が
流れ出し、自分が思う正しさが全てではないことに気づき成長して行く過程が
丁寧に描かれています。

垣内くん、不倫相手の浅見さん、弟の拓実といった、それぞれにいい味を持つ
男の人が登場します。特に垣内くんとの恋愛でも友達でもないふたりの距離間が
絶妙で、こういう関係もいいなぁと思わせてくれます。

さらりとした文体で最後はじんわりとくる、という瀬尾さんの魅力を堪能できました。

「ひとり日和」 青山七恵

2007-07-08-Sun
ひとり日和ひとり日和
(2007/02/16)
青山 七恵

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20歳の知寿が居候することになったのは、 71歳・吟子さんの家。
駅のホームが見える小さな平屋で暮らし始めた私は、キオスクで働き、恋をし、
吟子さんとホースケさんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。
選考委員が絶賛した第136回芥川賞受賞作。〜amazonより〜

母親が仕事で中国に行くことになり、フリーターの知寿は東京で仕事を見つける
ため、親戚のおばあさんのところでお世話になります。
閉塞的になりがちな設定でもどこか外の世界が近くに感じられたのは、
吟子さんの家から見える駅のホームが外の世界とのつながりの象徴だったから
だと思います。

知寿はとても淡々とした女の子。
考えや不満はありつつ、自分から積極的に動くことはしません。
恋愛面でもその淡々とした感じは変わらないので、何でこういう行動を
取ったんだろうと前のページから読み返したりしてしまい、
なかなか進まないんです(いい意味で)。

知寿の特徴として、自分と関係ある人のもの(タバコとか、ちょっとしたもの)
を盗んで箱に入れておく収集癖が出てきます。
もう少し明るい癖でもよかったような気もしますが、
細かい人の動きや場面の状況を上手に書く作家さんだと思いました。

季節とともに知寿がゆっくりと変化していく様子を描いた作品です。

「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」 柴崎友香

2007-07-04-Wed
素敵なタイトルです。
私なりの解釈ですが、次の町というのが人生の転機だとすると、
どんな歌をうたうの?はそこに行き着くまでに何をするの?ということで、
そこで何をするかが大切、という感じでしょうか

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?
(2001/02)
柴崎 友香

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大阪発東京行。友人カップルのドライブに男2人がむりやり便乗。
4人それぞれの思いを乗せたドライブ旅行の行方は? せつなく、はがゆい
ロード・ラブ・ストーリー。ほかに「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」を収録。
〜amazonより〜

表題作の主人公は、写真の才能があるのにフリーターをしている小林望。
友人・恵太とその彼女・ルリちゃんがディズニーランドへ行くと知り、自分の後輩・
コロ助を使ってその旅に便乗することから、4人のドライブが始まります。

小林は思ったことをすぐに口に出すので(高速道路は飽きたとか、どうしても
うなぎが食べたいとか)、旅は全然予定通りに進みません。
そんな旅の、4人の会話で物語は進みます。

柴崎友香さんの作品には2つの特徴があると思います。
ひとつは関西弁。
関西弁の会話がいきいきとしていて、とてもいいリズムと空気感があります。
もう1つは何気ない日常を書いているということ。何も起きていないようで
実はいろんなことが起きているということに気づかされます。

この作品の解説は綿矢りささんでした。豪華ですね。

「楽園のつくりかた」 笹生陽子

2007-07-03-Tue
楽園のつくりかた (角川文庫)楽園のつくりかた (角川文庫)
(2005/06/25)
笹生 陽子

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エリート中学生に転校の悲劇。しかもド田舎の学校。同級生は3人。
バカ丸出しのサル男、いつもマスクの暗い女、アイドル顔負けの美女(?)。
ああ、ここは不毛の地?それとも楽園なの?
退屈な田園に届く、おとうさんからのEメール。ぼくのユーウツを癒す救いの
メッセージ。でも、おとうさんって--。〜amazonより〜

都会で生まれ育ち、エリート目指してまっしぐらの主人公・優は家庭の都合で
突然田舎に転校することになった田舎の生活になじめず、ぶつくさ文句ばかり。
優の現代っ子キャラクターが、初めは生意気に感じますが、田舎でおじいさんや
同級生たちとコミュニケーションが取れない中で頭をフル回転させている姿が
本当に必死で、生意気なだけではないことがだんだんわかります。

なんとか元の生活に戻ろうと、いろんな手段を考えついて実行しては挫折する優。
その繰り返しによって、自分が立てていた将来の予定やエリートでいることが
全てではないことに気が付いていきます。

・・・そういう感じで終わる話だと思って読んでいたら、
「えぇっ!!」というどんでん返しがありました!

そしてラスト。優はおとうさんへメールを送ります。
このメールで、優が"楽園のつくりかた"に気が付いたことがわかります。
楽園はもともとあるものじゃなくて、自分でつくるものであり、今自分のいる場所に
合ったつくりかたがあるということ、だと私はとらえました。

「イサクのジョーク」 銀色夏生

2007-07-02-Mon
イサクのジョーク (角川文庫)イサクのジョーク (角川文庫)
(2004/08)
銀色 夏生

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銀色夏生のリリカルノヴェル!
オレたちは知っている。
どんなにかたよりなくいきあたりばったりでその場かぎりであっても、
愛や恋や仲間たちと共にすごすよろこび。〜amazonより〜

主人公・イサク。
けっこう格好よくてクールだけど、ピュアでどこかひょうひょうとした男の子。
銀色夏生さんはこういう男の子を書くのがとてもうまいです。

高校卒業間近のイサクの日々が描かれています。
イサクを取り巻く人々には、不良っぽいパスカル、お人よしのタカオ、
学校一の美人ユリ子、中学生に見える大学生いちこがいて、
それぞれが恋や将来について悩んでいます。

ほんとうに淡々と進んでいく日常。
ドラマチックなことが起こるわけではないのに、交わされる会話やところどころに
ある詩のような文章から、ふと考えさせられます。

私が一番考えさせられたのは、「先のことは、わからない。」というのがイサクの
考え方でした。イサクは一見、流されるように暮らしています。でも、そんな日々も
いいと思わせてくれます。流されたっていつかどこかに辿り着きます。
そこが意外と居心地が良いところだったりもするのかもしれません。

「明日の記憶」 萩原浩

2007-07-01-Sun
明日の記憶明日の記憶
(2004/10/20)
荻原 浩

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知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩---。
告げられた病名は"若年性アルツハイマー"。どんなにメモでポケットを膨らませても
確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。
上質のユーモア感覚を持つ著者が、シリアスなテーマに挑んだ最高傑作。
〜amazonより〜

50歳になった広告代理店の部長・佐伯は、最近なかなか人の名前や物の名前が
出てきません。病院で検査をして、若年性アルツハイマーと診断されます。
佐伯は失われていく記憶をつなぎとめようと必死でメモをとり、
せめて娘の結婚式までは営業部長でいたいと頑張りますが、
会社に病気がばれて左遷されてしまいます。

文章が一人称で書かれているので、まるで自分がそうなったような気がしてきて
怖くなります。決して人ごととは思えない病。もし自分だったら、はたしてどんな
行動をとるのでしょうか・・・。

周囲の反応がまた、とても怖いものでした。
本当に佐伯のことを心配してくれる人もいますが、蹴落とそうとする人もいます。
そして、騙そうとする人すらいます。唯一の救いが、妻・枝実子の強く深い愛情。
その愛情をひしひしと感じつつ最後は悲しくも美しく終わります。
それがかえってその先の大変さを想像させるのですが、
そこにいたるまでの気持ちやを生活を書いたとても良い作品だと思いました。
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